私共の長男は、平成30年12月26日の午後10時前に自宅近くの道路を横断中にワゴン車に跳ねられ、たまたま対向車線を通過中の乗用車に轢かれて死亡しました。この一報を聞いた時には青天の霹靂でとても信じられなく、ただ何かの間違いであってくれと願うばかりでした。しかし、現実は長男の事故死と直面し、家族みなうちひしがれて悲しみの日々を過ごしました。
長男はコンビニで買い物をして自宅に帰る途中の道路横断中にはねられていますが、なぜ、ワゴン車は長男を発見できなかったのか?発見していれば減速し避けることもできたのではと考えて、令和2年12月に千葉地方裁判所に損害賠償訴訟を提訴しました。
私共に見せられた実況見分調書には、ワゴン車の運転者の言ったことが記載され、速度については確かなことはわからないと感じました。また、防犯ビデオに長男と衝突したワゴン車が映されており、その写真が実況見分調書で示されました。しかし、家族にとってはとても見られるものではありませんでした。
そこで、事故の真実を知る方法はないものかと考えていると、親族から紹介された弁護士さんから「綾田成樹」という事故鑑定人を紹介されました。早速、防犯ビデオの画像写真を含めてすべての資料を送りました。その後、千葉市中央区青葉町の事故地の調査に出向いてもらいました。
私と担当弁護士がワゴン車(相手車)の衝突速度が出ますか?と聞いたときに、綾田氏は「この事故は相手車の速度よりも衝突地点が重要ですよ。」「防犯ビデオの画像写真をもとに測量すると判明するかも」との答えに驚き、本当にそのようなことが判るのか、疑問に思いましたが測量を依頼しました。
測量の結果、防犯ビデオの撮影先に植え込みがあり、その植え込みの上側からワゴン車(相手車)の前輪が見えることで、衝突時のワゴン車は右側がセンターラインを越えてゼブラゾーンに侵入していたことが判りました。このような調査により、長男はゼブラゾーンに立っていた時にワゴン車に跳ねられたことが判りました。
綾田氏は、この結果と相手車から飛び散った物の状態から衝突地点はゼブラゾーン上であるとの鑑定書を千葉地方裁判所に提出しました。
ところが、警察が示した衝突地点で事故が起きたのではないことはだれもが判る内容ですが、それを裁判官は疑いもなく認めたことで敗訴しました。
私共はこの判決に納得できず、東京高等裁判所に控訴し、綾田氏に鑑定結論を補充できないか相談しましたら、衝突後のワゴン車(相手車)の走行位置でもセンターラインを越えてゼブラゾーンに侵入していたことを再証明いただきました。
その結果、令和5年9月20日に東京高等裁判所より長男の過失が1割でワゴン車の過失が9割との逆転判決が言い渡され綾田氏には感謝しております。
受任弁護士の声
本件は、被害者が道路横断中に車両に衝突された事案です。警察の捜査記録では、被害者は、道路の車両進行車線上に佇立していて衝突されたものとされており、これにしたがって刑事判決も処理されました。しかし、被害者は働き盛りの健康な成人男子で、警察の認定した佇立・衝突地点は遺族には到底納得のできるものではありませんでした。
そこで、遺族は真実を解明するため、加害者に対し民事損害賠償請求訴訟を提起しましたが、裁判官は刑事事件で認定された事実を変更しようとはしませんでした。そこで、長年交通事故における工学・現象鑑定に携わっている綾田先生に相談し、鑑定を依頼しました。綾田先生は、刑事記録を読み込み、事故現場に赴いて道路状況を詳細に計測した結果、実況見分調書が誤っており、事故が反対車線で起こったこと、すなわち加害車両がセンターラインを越えて反対車線で佇立していた被害者と衝突したことを見抜いたのです。これで、被害者がセンターラインまで渡り終え、対向車線から来る車両の通過を待っていたところを反対車線にはみ出して進行して来た加害車両に衝突された事故態様が判明し、その他の状況とも符合しました。しかし、地裁の裁判官は、鑑定結論を認めず、刑事判決認定事実通りの判決を言い渡しました。そこで、原告は控訴し、綾田先生にさらに詳細な意見書を作成していただき証拠提出しました。その結果、控訴審では、綾田先生の意見書のとおり、事故がセンターラインを越えた地点で生じた事実が認定され、一審判決を変更する逆転判決が言い渡されました。
先生は、実況見分調書や刑事記録の現場写真等を詳細に検討され、事故直前直後の車両の位置や飛散物の分布などから科学的に衝突地点を鑑定され、その通りの認定となったもので、訴訟上の鑑定を数多くされている鑑定人ならではの力量を感じました。
